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特殊バイト潜入調査 FILE No.1 ADの実態に迫る!

某日、我々はMNB(マイナビバイト)編集部から、
「世の中にある気になるバイトの実態を調査せよ」という極秘指令を受けた。

どうやら、社会にある数多の職業の中で一風変わった職種の現場に潜入し、アルバイトの仕事を調べて報告すべし…ということらしい。むろん拒否権はない。

今回の調査ターゲットはテレビ業界の「AD(アシスタントディレクター)」。
我々が日々、目にするテレビ番組などの映像作品を陰で支える重要な仕事である。

そこで今回は、渋谷にあるとある映像制作会社に勤める若手ADを調査しにやって来た。

名前:野口健太郎(のぐちけんたろう)
生年月日:1992年12月16日(23歳)
職歴:AD歴約1年6ヶ月
給与:月給約20万円
備考:最近、大学時代から4年間付き合っていた
1つ年下の彼女にフラれ、目下傷心中。

ADの過酷すぎる仕事内容とは!?

一通り調査をしたところで、現場の仕事を終えたターゲットがスタッフルームへと戻って来た。そこで我々はADの実態をさらに究明すべく突撃取材を試みた!

――野口さん!ADの野口さん!!
野口「な、なんですか?今、仕事中なんですけど」

台本に書いてある情報が間違っていないか、どんなシーンにどんな小道具が必要かをチェックしているようだ。2台のパソコンを駆使して作業効率を限界まで上げているのだろう。

――突然すみません。MNB特命調査員です!今、ADのアルバイトについて調査しているんですが、少しお話よろしいでしょうか!?
野口「え!?うーん…。まぁ少しだけなら構いませんよ」
――ありがとうございます!では早速…ADは主にどんな仕事をするんですか?
野口「一口にADといってもいろいろと種類がありますが、僕はドラマ制作の助監督を務めるADなんです。現場では撮影開始の合図を送るカチンコを打ったり、俳優さんのケアをしたり、次にどんなカットを撮るのか、昼休憩はどこで入れるのかなど進行管理をしてますね」
――なるほど。では撮影がないときはどんな仕事をしているんですか?
「撮影期間に入る前の準備期間には台本に出てくる小道具を用意したり、台本に書かれている細かい表現に間違いはないかを調べたり、どのシーンに誰が、どんな小道具が出るのか、エキストラが何人必要かなどを具体的に記した交盤表を作ったりして、それはそれでかなり忙しいんですよ。撮影開始日が近づいてきたら美術さんやカメラマンさんたちスタッフと打ち合わせをして、ロケハンに行って撮影に臨むというのがおおまかな流れですね」

俳優さんや女優さんに立ち位置や細かい演技の要望などを伝えているようだ。この指示の通りにキャストが演じることを考えると重圧は凄まじいだろう。真剣な眼差しから現場の重い空気が感じられる。

――ちなみに、助監督ということは、けっこう偉い立場なんでしょうか?
「いやいや、とんでもない!AD(助監督)はチーフディレクター、セカンドディレクター、サードディレクターなどに分かれていて、場合によってはそれ以上あるんですが、今回の現場はサードまでなので、僕は一番下っ端のサードということになります」
――ところで…この業界にはどうやって入ったんですか?テレビ業界って門戸が狭いイメージがあるのですが…。
野口「コネというと聞こえが悪いですが・・・まぁそんな感じですね(笑)。僕は日本大学芸術学部に通ってたんですが、大学3、4年生の頃に自主映画を撮っていて就職活動をしてなかったんです。そんなある日、教授から『卒業後はどうするんだ?』と聞かれて『何も考えてないです』と答えたら、映像制作会社のアルバイトを紹介してくれまして。大学4年の終わり頃から働き始めたので、今でAD歴はちょうど1年半くらいですかね。これまでに何作かドラマに関わらせてもらってますが、ありがたいことに上司や先輩に恵まれて、いろいろとすぐに次の現場に誘ってもらったりして今に繋がっています。ADは人の繋がりが重要で、過去の現場でお世話になった先輩から『次は〇〇という作品の仕事をするからお前も来ないか?』なんて誘われることが多い。そういう意味では運もかなり重要かもしれませんね。この業界は圧倒的に若手が足りていないんですけど、実際に求人情報を見かけることは少ないでしょ。でもちょっとしたきっかけがあれば、あとはやる気次第で業界にうまく入り込めるんじゃないかな」
――忙しすぎて家に帰れなかったり睡眠時間があまり取れなかったり、というのは本当なんですか!?
野口「そうですね、本当です(笑)。基本的に休日は“あってないようなもの”。僕の場合、もうずいぶんと休みなく働き続けてます。それに、例えば撮影期間中なら、朝5時30分頃に集合してロケバスで現場まで行き、9時から撮影開始。早ければ夕方前には終わりますが、長いときだと夜遅くまでかかってしまうことも…。しかもそこで終わりではなくて、撮影終了後にスタッフルームまで戻ってきて次の日の準備。そうなるともう終電がなくなっていることも多いので、マンガ喫茶やカプセルホテルに行ってシャワーを浴びたりして…。服が汚かったり臭かったりするといけないので、着替えは大量にスタッフルームにストックして、時間があるときにコインランドリーで洗ってますね(苦笑)」
――やはり体力と気力の勝負なんですね…。そんなに忙しいとプライベートの時間を取るのもなかなか難しそうですが、そのあたりはいかがですか?
野口「実はつい先日、大学時代から4年間付き合っていた彼女と別れてしまいまして(苦笑)。僕は基本的に夜中遅い時間まで働いてるので彼女と会えるのは月に1、2回くらいでした。しかも、会えるといっても、深夜にタクシーで会いに行って早朝にまた仕事に出かけるので、その夜中の数時間だけとか。彼女としては『お前のスケジュールに合わせられるか!!』って感じですよね(笑)。あと友達と飲みに行くとしても、その日急に時間ができたから空いてる友達を誘って飲むっていうぐらい。何日も前から約束して飲みに行くなんてとてもできないですね」
――彼女にフラれ、たまにしか友達と飲みにも行けないとはやはり過酷ですね…!それでもこの仕事を続けられる理由は何でしょうか。
野口「やっぱり、この仕事が好きだからってのが大きいかな。僕がこの業界に入りたいと思ったきっかけは1996年に公開された映画『インデペンデンス・デイ』。当時3歳だった僕を映画好きだった母が映画館に連れて行ってくれて。当然、字幕なんて読めませんから、母に全部訳してもらってましたね。そのときに『映画ってすごい!僕もこんな映画を作りたい!』と幼心に思ったのを覚えています。そこから20年経ってこの業界に入って、確かに仕事は大変だし給料も多くはないですが、辞めたいと思ったことは今まで一度もありませんよ。今でこそ月給20万円くらいですが、入ってすぐの頃は月7万~8万円くらいしかもらえなかったんですけど(笑)、性格上嫌いなことは続けられないタイプなので、辛くてもやり続けられているのは『好きだから』としかいいようがありません」

野口さんが語るADの魅力と将来の目標

――仕事をしていてやりがいを感じるのはどういうときですか?
野口「僕らの仕事は自分が手掛けたものがわかりやすく見えるのがいいんですよ。例えば時代劇の撮影で『書状』が必要だとしますよね。その『書状』の中身は僕らが考えて小道具さんに発注するんですよ。『書状』ひとつとっても、その時代の『書状』がどういう形式なのか、花押はつくのか、敬称は『殿』なのか『様』なのか。物語の流れやキャラクターを考えつつ、そういった細かいところまである程度好きに作っていいんです。だから自分のこだわりが作品の中で目に見えてわかるんです。作品を観たときに、このシーンの小道具は僕が作ったんだって考えると嬉しいですね」
――作品に自分の仕事が直接反映されるのはやっていて楽しそうですね!ADを仕事にしているって羨ましがる人も多いのでは?
野口「家族はみんな応援してくれてます。『好きなことを仕事にしてるんだから頑張れ』って。友達にも『いいなぁ』って羨ましがられることが多いですね。世の中の多くの仕事って一言では説明できないものが多いじゃないですか。だけどADの場合、テレビつけて『この番組作ってる』で説明完了。母や妹に仕事の話をするときも5秒で説明できるのは楽ですよ(笑)。それに芸能人にも会えるので、純粋に華やかなイメージを思ってる人も多いんじゃないかと」
――今後仕事をしていく中で目標ってありますか?
野口「僕はまだまだADとして駆け出して、コレと言える武器がない。今お世話になってる先輩と比べても何ひとつ勝てる部分がないんですよ。だからまずは先輩に認められるくらい仕事ができるようになりたいですね。あとは早くセカンドになりたい!早い人だと数年でセカンドに昇格できるらしいし、セカンドになればだいたい月給30万円以上もらえたりするので、そこ(セカンド)が当面の目標ですね。ただ将来的な最終目標はもちろん監督ですよね。監督になってテレビドラマももちろんですが、やっぱり自分の映画を撮りたいな」

ADの仕事道具「カチンコ」を鳴らす野口さん。シーン番号、カット番号、テイク番号などが書かれたカチンコは撮影された映像を確認するのに役立つらしい。いかに画面から素早くはけられるかも腕の見せ所だとか。

――“野口監督”デビュー作の取材もぜひ!最後に仕事をしていくうえで大切にしているポリシーを教えてください!
野口「まずは、誇りを持って仕事をすること、コレですね。いわれた仕事をただこなすだけじゃなく、自分でしっかりと考えて仕事をするのが大事。先輩にはよく『お前の思いはないのか、お前の思いを聞いてるんだ』と言われるので、“思考停止”せずに作業のひとつひとつに自分の考えを持つようにしてます。そうすれば、おのずと誇りが持てるようになると思うので。あとは、謙虚でいること、コレも大事ですよ。というのも、僕自身がもともと人に対して気を遣えるタイプではないので、自分に言い聞かせる意味でポリシーにしてます(笑)」
――誇りを持つというのは自分の仕事に責任を持つということですね!お忙しいところありがとうございました!

野口さんは自分に武器は何もないというが、プライベートの時間や睡眠時間を削ってまでひとつの仕事に打ち込めるのは、立派な才能といえるように思う。

有名人と直接会って一緒に仕事ができることから、多くの人はテレビ業界に対して華やかな印象を持っているだろう。実際は体力と気力を必要とする仕事であることも確かなのだが、自分のアイデアで勝負できるクリエイティブな仕事が多いことも事実。自分の仕事が形となって残るため、より大きなやりがいを感じることが出来る素晴らしさはこの仕事ならではの魅力ではないだろうか。